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「INSPIRED」要約と書評

inspired by marty cagan


マーティー・ケーガン著「INSPIRED」は、プロダクトマネジメント実践の極意を伝授する一冊です。この本では、優れたプロダクトマネージャーが持つべきスキルや、チームを成功に導く方法について詳しく説明されています。

 

2023/07追記 INSPIREDの著者、マーティ・ケーガンが、生成AIを踏まえた考察を書いていたのを記事化していますので、あわせてお読みください。

www.4-growth.net

INSPIREDの主要な構成

  1. プロダクトマネージャーとは何か?
  2. 優れたプロダクトマネージャーに必要なスキル
  3. プロダクト開発のプロセス
  4. プロダクト戦略の立案
  5. アイデアの検証とプロトタイピング
  6. データに基づく意思決定
  7. チームの組織とマネジメント
  8. グロース戦略

INSPIREDの重要ポイントの要約

INSPIREDの記載の中で重要なポイントを以下に抽出します。

効果的なプロダクトマネジメントの4つの柱とは?

著者マーティ・ケーガンは、以下の4つが効果的なプロダクトマネジメントにおいて重要としています。

  1. ビジョン:
    強いチームを作るためには、明確なビジョンを持ち、目指すべき方向を示すことが重要です。優れたチーム作りの鍵は、鮮明なビジョンを描き、全員が共有する目標に向かって進むことです。これにより、チームは一致団結し、より効果的に働くことができます。
  2. データ:
    自分たちの主観だけに頼らず、製品が顧客の役に立っていることを示すエビデンスを探す必要があります。プロダクトマネジメントでは、主観的な意見だけでなく、データに基づく客観的な情報が重要です。これにより、製品が顧客の期待に応えているかどうかを正確に把握し、適切な意思決定が可能になります。
  3. アイデアの検証:
    アイデアのほとんどは失敗しますが、速度を持って何度も検証することで成功に近づけます。多くのアイデアが失敗することを受け入れ、迅速に試行錯誤を繰り返すことが成功への道です。素早いフィードバックループを通じて、効果的なアイデアを見つけ出すことができます。
  4. 問題解決:
    顧客、市場、競合、社内環境、チームのすべての問題と向き合い、一つずつ解決していくことが求められます。プロダクトマネジメントでは、顧客の課題や市場状況、競合状況、社内の状況、チームの課題と真摯に向き合い、効果的な解決策を実行していくことが不可欠です。これにより、持続可能な成功が実現します。

プロダクトマネジメントにおける「4つのリスク(価値)」とは?

「INSPIRED」において、プロダクト開発における4つのリスクとは、プロジェクトが失敗する原因となる要因を指します。これらのリスクを適切に評価・管理することで、プロジェクトの成功確率を高めることができます。それぞれのリスクについて、以下に丁寧な解説を記載しました。

リスク
種類
解説 役割
Usable ユーザーにとって使いやすいかどうかのリスクです。製品が直感的で簡単に使えるようにデザインされているか、ユーザーのニーズに合っているかを評価することが重要です。 デザイナー、ユーザーエクスペリエンス(UX)専門家が主にコミットします。
Viable ビジネス的に実現可能かどうかのリスクです。製品が収益を上げることができるか、市場で競争力があるかどうかを検討することが求められます。 プロダクトマネージャー、ビジネスアナリストが主にコミットします。
Feasible 技術的に実現可能かどうかのリスクです。製品が開発される技術が現有の技術やリソースで実現可能であるか、また開発にかかるコストや時間が適切かどうかを評価することが必要です。 テックリード、エンジニアが主にコミットします。
Valuable 顧客や市場にとって価値があるかどうかのリスクです。製品が顧客の問題を解決し、市場で需要があるかどうかを検証することが重要です。 プロダクトマネージャー、データアナリストが主にコミットします。顧客のフィードバックも重要な参考になります。
  • Usable(使用可能):
    ユーザーが製品を簡単に使えるかどうかを評価するリスクです。使用可能性が低い製品は、顧客が離れる原因となります。このリスクを回避するためには、ユーザーインターフェイスやユーザーエクスペリエンスの設計に注意を払い、顧客のニーズに適した製品を提供する必要があります。日本語で「使用可能」と言います。
  • Viable(実現可能):
    製品がビジネスとして成功する可能性を評価するリスクです。実現可能性が低い製品は、収益性が悪く、ビジネスの持続性に問題が生じます。このリスクを回避するためには、市場調査や競合分析を行い、製品が市場で受け入れられることを確認する必要があります。日本語で「実現可能」と言います。
  • Feasible(技術的に実現可能):
    製品が技術的に実現可能かどうかを評価するリスクです。技術的な実現可能性が低い製品は、開発が困難になり、リソースの無駄遣いにつながります。このリスクを回避するためには、開発チームと連携し、技術的な課題や制約を明確にし、適切な技術選定を行う必要があります。日本語で「技術的に実現可能」と言います。
  • Valuable(価値ある):
    製品が顧客にとって価値があるかどうかを評価するリスクです。価値が低い製品は、顧客にとって魅力的でなく、市場での成功が難しくなります。このリスクを回避するためには、顧客の要望や課題を理解し、彼らにとって価値ある製品を提供することが重要となります。このリスクを回避するためには、顧客の要望や課題を理解し、彼らにとって価値ある製品を提供することが重要です。顧客インタビューや市場調査を通じて、顧客のニーズを把握し、製品が提供する価値を明確に定めることが求められます。日本語で「価値ある」と言います。

これら4つのリスクは、プロダクト開発の過程で注意深く評価・管理されるべきポイントであり、それぞれのリスクが高いままプロジェクトが進むと、プロダクトの失敗やリソースの無駄遣いにつながる可能性があります。「リスク」と呼ばれるのは、これらの要因がプロジェクトの成功を阻害する可能性があるためです。プロダクトマネージャーやチームメンバーは、これらのリスクを適切に評価し、バランス良く取り組むことで、より成功確率の高いプロダクト開発が可能となります。

プロダクトマネジメントにおける役割には何がある?

「INSPIRED」に登場する各役割には、プロダクト開発において重要な役割が与えられています。プロダクトマネージャー、デザイナー、テックリード、プロダクトマーケティングマネージャー、データアナリスト、エンジニア、ユーザーエクスペリエンスリサーチャーなど、それぞれの専門知識を活かし、チーム全体で協力してプロダクト開発に取り組むことが求められます。

以下の表をご覧ください。

役割 解説 関わりの深い他の役割
プロダクトマネージャー 製品の戦略と方向性を決定し、市場のニーズを理解し、顧客価値を最大化するための機能やプロジェクトの優先順位を決定する役割です。 デザイナー、テックリード、プロダクトマーケティングマネージャー
デザイナー ユーザーエクスペリエンス(UX)とユーザーインターフェイス(UI)の設計を担当し、製品が使いやすく魅力的であることを確保する役割です。 プロダクトマネージャー、テックリード
テックリード 技術面での製品開発のリーダーシップを担当し、技術選定、アーキテクチャ設計、チームの技術力向上に責任を持つ役割です。 プロダクトマネージャー、デザイナー、エンジニア
プロダクトマーケティングマネージャー 製品の市場戦略を立案し、製品のポジショニング、ターゲット顧客の特定、競合分析、プロモーション戦略の策定などを行う役割です。 プロダクトマネージャー、デザイナー、営業・マーケティングチーム
エンジニア 製品の実際の開発を担当し、コーディング、テスト、デバッグなどを行う役割です。テックリードの指導のもと、品質の高い製品開発に貢献します。 テックリード、プロダクトマネージャー、デザイナー
ビジネスアナリスト 市場や顧客のニーズを分析し、ビジネス要件を明確化する役割です。製品開発チームと協力し、製品のビジネス的な価値を最大化します。 プロダクトマネージャー、デザイナー、テックリード
データアナリスト データを分析し、製品のパフォーマンスや顧客の行動に関する洞察を提供する役割です。データに基づく意思決定をサポートし、製品改善に貢献します。 プロダクトマネージャー、デザイナー、テックリード、ビジネスアナリスト
営業・マーケティングチーム 製品の販売やプロモーションを担当し、顧客とのコミュニケーションを行う役割です。製品マーケティングマネージャーと連携し、市場での製品の成功を目指します。 プロダクトマーケティングマネージャー、プロダクトマネージャー
カスタマーサポート 顧客からの問い合わせやフィードバックに対応し、製品の使用に関するサポートを提供する役割です。顧客の声を製品開発チームにフィードバックし、改善に役立てます。 プロダクトマネージャー、デザイナー、エンジニア、テックリード
品質保証(QA)チーム 製品の品質を確保するためにテストやバグの特定、修正のサポートを行う役割です。エンジニアやデザイナーと連携し、製品の品質向上に貢献します。 エンジニア、デザイナー、テックリード、プロダクトマネージャー

 

特にINSPIREDでは、「三職種上流からの連携」として、プロダクトマネージャー、デザイナー、テックリードの連携が強調されています。これらの役割が密接に連携し、プロダクト開発の初期段階から一緒に取り組むことで、効果的なプロダクト戦略の策定や、ユーザーのニーズに応えるデザイン、技術的な実現可能性の検討がスムーズに進みます。このような連携により、プロダクト開発の効率が向上し、成功確率も高まるとされています。

他の役割についても、プロダクト開発全体を円滑に進めるために、それぞれの専門分野での知識やスキルを活かし、他のチームメンバーと積極的に協力することが重要です。例えば、データアナリストはプロダクトのパフォーマンスを分析し、改善点や新たなアイデアを提案する役割がありますし、エンジニアは技術的な観点から製品の実現可能性や最適化を検討します。ユーザーエクスペリエンスリサーチャーはユーザーのニーズや課題を明らかにし、プロダクト開発にフィードバックを与える役割があります。

これらの役割が協力し合うことで、プロダクト開発はより効果的かつ効率的に進められ、最終的には、ユーザーにとって価値あるプロダクトを生みだすことができる、というのが本書の主張です。

INSPIREDは、このようなチーム間の連携を重視し、各役割が協力してプロダクト開発に取り組むことを強調しています。互いにアイデアや意見を共有し、柔軟に対応しながら、一緒に問題解決に取り組むことが求められます。これにより、プロジェクト全体のスピードが上がり、より良いプロダクトを市場に届けることができるでしょう。

さらに、プロダクト開発におけるリーダーシップの重要性も指摘されています。リーダーは、チームのビジョンを明確に伝え、チーム全体をまとめ上げる役割を担っています。リーダーが強いリーダーシップを発揮することで、チームは一体感を持ち、共通の目標に向かって効率的に進むことが可能となります。

「INSPIRED」で提唱される各役割や連携の重要性を理解し、自社において実践することで、プロダクト開発の効果や効率を高めることができます。このような考え方や手法を取り入れることで、競争力のあるプロダクトを市場に提供し、ユーザーに喜ばれるサービスや製品を生み出すことが期待できるでしょう。また開発チームは、より強固なチームとなり、持続的な成長が可能となると「INSPIRED」では説かれています。

著者マーティ・ケーガンについて

マーティ・ケーガンは、シリコンバレーの著名なプロダクトマネジメントコンサルタントであり、Apple、eBay、Adobeなどの大手企業でプロダクトマネージャーとしての経験を持っています。彼はまた、プロダクトマネジメントの指導者として広く認知されており、多くの企業やスタートアップに対してアドバイスを提供しています。

マーティ・ケーガンの著書

 

Silicon Valley Product Groupとは?

マーティ・ケーガンの所属するSilicon Valley Product Group(略称:SVPG)は、2006年にテクノロジー業界のベテランであるマーティ・ケーガンによって設立されたコンサルティング会社です。同社はシリコンバレーを拠点にしており、世界中のテクノロジー企業やスタートアップに対して、プロダクトマネジメント、プロダクトデザイン、エンジニアリング、リーダーシップ、組織文化といった分野におけるアドバイスや教育、コーチングを提供しています。

https://www.svpg.com/

*ニュースレターは有益な内容が多いので、プロダクトマネジメント登録をお勧めします。

同じテーマの他の書籍との比較

「INSPIRED」は、プロダクトマネジメントに関する他の書籍と比較しても、実践的で具体的なアプローチが特徴です。また、著者の豊富な経験に基づいたエピソードや事例が盛り込まれており、リーダーが直面する現実的な課題に対する具体的な解決策が提案されています。

読者層

この本のターゲットオーディエンスは、プロダクトマネージャーやプロダクトオーナー、プロジェクトマネージャー、そしてプロダクト開発に関わるエンジニアやデザイナーなどです。また、新規事業開発やイノベーションに興味がある経営者やマネージャーにも役立ちます。

評価

「INSPIRED」は、プロダクトマネジメントの分野で広く高い評価を受けており、多くの読者が実践的なアドバイスや事例を参考にしています。ただし、翻訳に関しては若干の不満が指摘されることもありますが、それでも読む上で問題ないレベルです。

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日本国内のスタートアップ企業(B2BのSAAS企業)における実践を考えてみる

日本国内のB2B SAASスタートアップ企業であれば、「INSPIRED」の教えを以下のように実践できそうです。

  1. ビジョンの明確化: チーム全体で共有する明確なビジョンを設定し、それを基にプロダクト開発の方向性を決定します。例えば、顧客の業務効率を向上させることを目指すSAASプロダクトの場合、そのビジョンを達成するための機能や改善点を検討します。
  2. データドリブンな意思決定: 顧客の使用状況やフィードバックを収集し、データをもとに製品の改善や機能追加を行います。例えば、特定の機能があまり使われていないことが分かれば、その原因を調査し、必要に応じて修正や削除を検討します。
  3. アイデアの検証: 新しい機能や改善案を素早くプロトタイプ化し、顧客に提供してフィードバックを収集します。これにより、アイデアの有効性を早期に確認し、失敗を最小限に抑えることができます。
  4. 問題解決: チーム内で発生する問題や課題に対して、主体的に取り組み、解決策を見つけ出します。例えば、エンジニアとデザイナーのコミュニケーションがうまくいかない場合、適切なツールや方法を導入して改善します。

直面しそうな課題としては、スタートアップ企業ではリソースが限られているため、効率的にプロダクト開発を進めることが求められます。また、市場の変化に素早く対応する必要があります。

日本国内のエンタープライズ企業(B2Cのマーケットプレイス運営企業)における実践を考えてみる

日本国内のB2Cマーケットプレイス運営エンタープライズ企業では、「INSPIRED」の教えを以下のように実践できそうです。

  1. ビジョンの明確化: 企業全体のビジョンや戦略に沿ったプロダクトの開発を行い、各部門と連携してプロダクトの価値を最大化します。例えば、地域の中小企業をサポートするマーケットプレイス型サイトのケースであれば、様々なサポートのパターンがある中から、ビジョンにフィットするものに絞り込んだ開発を行うことができるでしょう。
  2. データドリブンな意思決定: 大規模なユーザーデータを活用して、顧客のニーズに応えるプロダクトの改善や機能追加を行います。例えば、ユーザーの検索履歴や購入履歴から、人気の商品やカテゴリを分析し、それに基づいた推奨機能を開発します。
  3. アイデアの検証: 複数のプロダクトチームが連携して、新しい機能やサービスのプロトタイプを開発し、実際のユーザーにテストしてフィードバックを収集します。これにより、アイデアの効果を早期に確認し、失敗を最小限に抑えることができます。
  4. 問題解決: エンタープライズ企業では、多様な部門やチーム間のコミュニケーションが重要です。そのため、異なる部門間の課題や問題に対しても、主体的に取り組み、解決策を見つけ出します。例えば、マーケティング部門とプロダクト部門が連携して、ユーザーのニーズに合ったプロモーションを実施することが求められます。

直面しそうな課題としては、エンタープライズ企業では、組織の規模が大きいため、意思決定が遅れがちになることが挙げられます。また、異なる部門やチーム間のコミュニケーションの円滑化が重要であり、適切な情報共有や協力体制を構築する必要があります。

 

INSPIREDの要約まとめ

INSPIREDは、プロダクトマネジメントの本格的な導入を考えるならば、思想面から実践面まで,真のバイブルといえる優れた書籍です。

豊富な経験に基づく本質的な事ばかりが書かれているので、一定の経験者であっても,学びは多いでしょう。

個人的にも何回も読み返している書の一つです。

ぜひこの記事を参考に,一読を検討してみてください。